音は、空気中では1秒間におよそ330m伝達するという。対して、水中では、この4倍以上の1460mにもなる。空気中での伝達度合いをカバーするために、陸上の動物は、外耳を発達させてきた。
伝達力の高い水中では外耳は不要であり、カエルなども、鼓膜に相当する部分が露出している。サカナは、この伝達力に加えて、横断的にある側線で状況を認識している。いわば、身体全体で情報を感じ取っているのだ。
だから、水によって伝達される情報を、かなり高い精度で聞き分けているといわれる。ベイトの逃げる音や仲間が逃げる音。仲間が捕食する音や人為的な音。つまり、サカナは音の種類を経験で聞き分けている。そして、経験を積めば積むほど、その精度は高まっていく。
ダグ・ハノンは、こうした経験から、ビッグバスには、ノンラトルが効果的だと説いた。スレたフィールドにおいては、なお顕著だ。大切なことは、「音」であるという点だ。「音」と「波動」は、全く異なるものである。
スピナーベイトが作り出す波動は、「音」ではない。だから、ビッグバスにも利くという考えだ。経験は、敏感に危険な「音」を聞き分ける。「魅力的な波動」は、警戒心よりも興味をそそる。「アピール」とは何なのか。それを考え始めると、実に奥深い。
「音」を「波動」として捉えてみることもできる。逆に、別物として扱ってみることも可能だ。まさに、サカナとの知恵比べがそこにある。ルアーという道具の持つ意味が、「魅了する」という意味であるという原点に返る。
本当にサカナを「魅了する」ものは何か?人間は、サカナにはなれないが、他の動物が持たない「想像力」がある。水槽のサカナの目を見つめても答えてはくれない。だから、釣りはやめられないのだ。